弥生エチュード
日本の美しい風景に出会える場所。
風の歌に諭され歩いていると、ふと遠くこだまする小鳥の囀りがストーリーテラーとなり、歩調のリズムと重なっては、僕の心に人生の台本を鮮明に浮かび上がらせてくるようだ。
みろくの里。
無明院へとつづく参道を下り、森林浴に浸る散歩道。
鐘を鳴らすと、四月の柔らかな陽射しが眩しく、心に溶けるように降り注いでくる。
途中、茶屋の脇の池の水車が回り、辺りには小川のせせらぎから生まれる、浄化の波紋が延々と広がっていくように響き渡っていた。
蓮の池には鯉が泳ぎ、艶やかな着物のように、朱色が湖面を染め抜き揺らめいている。
道の脇には、ポツリポツリと仏像が並び、ここは神様の暮らす国なのだといったリアルな感覚が、心に突如押し迫ってくるように感じられた。
僕はここへくると、いつもそんな風に感じていた。
旅人の疲れを癒す風情の中に佇む温泉施設がある。
その先へと更に足を運ぶと、大きな弥勒菩薩の石像が祭られている。
僕はこの土地に強い因縁があるようで、人生の節目には自然とこの場所へ何かの力に導かれ、辿り着くように感じていた。
もう、桜も散り急ぐ気配を見せ、さつきの風が天空に舞い込むことが近いと告げている。
何となく鼻歌を一節歌えば、あの震災が大和に与えた影響の大きさを、改めて噛みしめるようだ。
ALL JAPAN
ALL JAPAN
本当の温かな思いやりって、一体どんなものだろう。
本当の人の幸せって、一体どんなものだろう。
とてもシンプルに、ただそのことに僕達一人一人が静かな心で思いを馳せることこそ、新しきみろくの世の入り口なのだろうと物思う、2012年の春の徒然。