テレパシー
2012年も残すところ2日となりました。
今月は新政権誕生のニュースや、マヤ歴が終焉を迎えるというビッグイベントもあり、ライブハウスで歌う日々の中で人類の未来について色んなことを考えていました。
新政権が誕生したことにより、ファシズムの到来をイメージすると寒気がして、1日悶々として過ごしましたが、今は、新しいパラダイムの創造の為に必要なプロセスとして感覚的に良い流れを感じています。
今日は、昨年から今年にかけて作り完成した曲からインスピレーションを受け、遊び感覚で書いた散文を紹介します。
テレパシー
白紙に並んだコード譜をぼんやりと眺めている。
何だか翼を羽ばたかせ空に踊る天使みたいだ。
Bm7♭5が僕を見つめ返す。
「やあ。運命の中で出会った心のハーモニーよ」
天界のしもべ達が白紙の上に姿を現し、この世界にメロディーとハーモニーによる瑞々しい光を届けてくれる。
F♯m Dmaj7 F♯m Dmaj7…
繰り返されるAメロのコードリフ。
僕は一人、そのドラマティックな響きの中を、あの頃の想い出に舞い落ちてゆく。
物語は静かに始まり、そして四分の四拍子のメトロノームがシーンに駒を打ち込んでいくよ。
裏拍が跳ねて、僕の感情は起伏する。
心象風景が鋭角に滲み出し、僕は初めて僕の魂の鼓動に出会うんだ。
イントロが見せたメジャーキーの恍惚とした色彩から一変した歌の表情は、マイナーキーへの転調が落とす影に、鬱屈とした僕の情熱のやり場のなさを曝け出し、悲しみは静寂の中へと砕け散る。
やがて、物語は次の角を折れ、BメロがBmに受け継がれてゆく。
ふと瞼を閉じると、人波を流されている無力な僕が、街の中で等身大に浮かび上がりはじめた。
Aメロで歌った街の風景の中での心理描写は、今静かに一人歩きをはじめる。
ざっくばらんに並んだコードの上を、天使の囁きに見守られながら、僕の魂は歌い続けている。
「ねえ。君の笑顔に出会えるかな」
僕の心の中で、僕の知らないもう一人の僕が、見たことのない表情を浮かべ、君にテレパシーで語りかけるんだ。
君自身さえも欺く程に、きっと君も僕と同じように、もう一人の自分とはぐれたままなのだろう。
だから、僕達には共通してこのメロディーの囁きが、この人生に必要なんだ。
つまり、僕も君もとても運がいいような気がする。
何故かって。
それはね、天使に出会えるだけ心の純度を保ち、この世界で愛や真実を求め歩き続けているからだよ。
それを人は幸せ者って言うんじゃないかな。
僕は、人の幸せや人生の本当の財産って、そういった精神的な価値や豊かさだと思うんだ。
そうやって僕らは大人になってきたのだろう。
CメロはまたBmで始まった。
僕は、日常の自分のパーソナリティーすら逸脱してしまっているかのようで、もう一人の自分と感覚が同一化している。
Bm7♭5 Amaj7 A7 D Dmaj7…
そして、やがて E7sus4 E7
サビへ向かいメロディーは高揚していく。
光の扉を抜けて、音楽はAの和音と共に真実を叫び上げる。
サビのメロディーラインは、歌の全生命力の凝縮した密度を宿し、そのエネルギーを世界に放射し、光輝く。
僕はこれが愛だと、心の迷いを今完全に払拭していくよ。
テレパシー。
コードにメロディーが弾けては、天界に舞う天使達の囁きが聞こえる。
そして、僕は君へと愛のメッセージを歌い続けているよ。
僕の知らないもう一人の僕。
君の知らないもう一人の君。
純化してゆく精神の響きの中に舞い落ちる魂の叫びは、邪気のない天使達へと通じる君と僕のメロディー。