CHANCE
年末の気忙しさに揉まれ、人は今何を思うのだろう。
時代は常に移り変わり、暮らしは流れ続ける。
僕は一人、夜の片隅で、二〇一四を振り返っている。
今年の僕は、とにかく人前で数多く歌おうと思った。
難しいことは何も考えないで、ただ一心に、ライブを続けて来た。
元旦生まれの僕は、切りが良く、もうすぐ四十歳が終わろうとしている。
ジョン・レノンは、たかだかこれだけの短い人生だったのかなんて思う。
彼がもし生きていたならば、どんなメッセージを歌に残していたのだろう。
政権続行の選挙が過ぎ、公務員の給料がさっさと上げられて、そして血税は絞り取られていた。
都内の公園は封鎖され、ホームレスは街の片隅に追いやられていた。
ネットでは、人気プロガー達へのがさ入れが続く。
恐ろしい言論弾圧は、ナチスさながらのファシズムだ。
そして、僕らの納めた税金で武器を作り、外国に売る。
政治などは行われておらず、搾取に次ぐ搾取。
僕は、人類史上に残るメルトダウンの国で、殺気立つファシズムを目の当たりにし暮らしていた。
第二次世界大戦の爪後から得た九条は、骨抜きにされてゆく。
伝統芸術は廃れ、安くて便利に暮らしはヤツレこけて見えた。
そして、晴れた日には空におびただしいケムトレイルが散布されていた。
黄昏時に、部活を終えた学生が友達と、友情を結びながら家路を辿る頃。
空からは、化学物質やウィルスの入ったと言われているケムトレイルが、静かに地上に舞い降りていた。
それはまるで、一九四五年に広島と長崎に投下された原子爆弾が、姿を変えたに過ぎない代物なのだろうと僕は思った。
植民地、ジャパン。
ワクチン接種の義務化。
マイナンバー制の導入。
この尊厳が踏みにじられた世界で、僕に何が出来るだろう。
もうとっくにボロの隠しきれなくなった平和というカモフラージュから、もう一つのリアリティーが日常に姿を覗かせ、社会的弱者切り捨てのファシズムが、生活を益々深刻に冷たくさせていた。
だけど、繰り返し主張して来た通り、まだまだ多くの国民にはその意識が薄いように思えた。
それでも、徐々にこの社会も極限を迎え、生き方をシフトせざるを得ない状況になっているようにも見えた。
人は、現実として自分の今日の生活が切迫し、不条理を体験するまで変われなかったのだと思う。
戦後ずっと、島国の温い平和が続き、何となく自由や尊厳が保証されているような錯覚に踊らされて来た。
与えられた豊かさの中で人生を謳歌し、平和を勝ち取った経験がない。
だから、温い平和が実際に崩れて、独裁が自分の生活に明らかに牙を剥く日まで、脳天気にはしゃぎ続けるだけの幼い子供みたいと、諸外国の人々に言われていたとしても仕方がない状況だったと思う。
子供はファンタジーが好きだ。
ファンタジーに憧れ、その中で人生の教訓すら育み、成長してゆく。
だけど、いつかは目覚め、現実や世界について、自分の考えを語り、行動する大人になる日が誰にもやって来る。
ビートルズは、ある意味ファンタジーだったと思う。
ジョンはやがて、夢は終わったと言う言葉を残している。
そして、GODの中で、自分とヨ―コだけを信じ、それが現実だと歌っている。
これは勿論、僕の解釈で、マニア並に詳しかった訳ではないけれど。
僕は昔から、ビートルズよりもジョンのソロに惹かれていた。
きっと、ヨ―コと出会ってから、人間ジョン・レノンになっていった魂の覚醒する軌跡に関心が向いていたからだと思う。
二〇一四年の十二月。
そして、二〇一五年は、この国や世界の未来の明暗を分けるであろう大切な時期だと直感が僕に囁く。
畑でいうと、土地をしっかりと耕して、どんな種を蒔くかで、収穫するものが決定していくようなイメージだ。
特定秘密がわんさかと取り決められていき、戦争の準備が着々と進められていた。
だが、平和しか知らない国民は、その現実をリアルに受け止める本能や第六感を鈍らせ、ファンタジーに夢中だった。
福島第一原発のメルトダウンという運命の中でさえ、経済大国という名のファンタジーをまだ見ていた。
それはその筈だった。
今までずっと、平和しか経験して来なかったのだから。
自分が誰かに殴られてみるまで、本当にはその痛みや辛さなんて分からなくても当然だった。
平和の皮を被って来た、ファシズムの足音が聞こえるかい?
二〇一五年は、いよいよ勝負の年になる気がする。
だからこそ、現実を困難として受け取るのではなく、魂の成長する為のチャレンジとして、出口を自分で用意していくんだ。
困難として定義すれば、出口がなくなっていく気がする。
発想を転換させて、社会のカオスに巻き込まれず、愛の心で、音楽を奏で続けていよう。
時代に闇が覗いているのは、そこに光を当てるチャンスがあるということだ。
最も暗きは夜明け前。
闇に必ず、光は生まれる。
この国の本当の素顔を知りたいのなら、社会的弱者が一体どんな目に遭わされているのかをごらんよ。
口は綺麗事を言うから。
君はまだ、煌びやかな街の光に、心を奪われている。
虚構を支配するファシズムの彩りに、一睡の夢を見ている。