ALL LIGHT

 正午前に眠りから覚めた俺は、ようやく秋らしさを帯び、大気の熱が沈静化してゆく季節の訪れに心和ませ、みずみずしい感性に磨きをかけるように部屋の窓の外に広がる世界に五感を注ぎ、心のテンションの高まりに自分の握りしめた希望の表情の健全さを確かめた。

 やあ。
 君の暮らしのリズムは今日はどんな調子だい。
 俺は人生の中で音楽を愛し、君の心の形にこの情熱と共に寄り添い生きていきたい。
 時代は常に流れ、世の中の常識なんて例えば何千年前も今もいつも誰にとっても当てになりはしないだろう。
 君の真っすぐで綺麗なその瞳を、誰かの気まぐれが傷つけてしまう時、俺は真心一つ持ち、君の傍に上手く寄り添っていられるかな。
 そうなら素敵なのにな。

 傷ついた心が再び情熱を宿すまでの時間が、例えば俺と君の約束なのかもしれない。

 全ての善悪が、俺と君の人生にどしゃぶりの雨の様に降り注ぐ。
 悲しみを拾うも喜びを拾うも、俺達の自由意思に委ねられ。





 2010年
 今静かに秋が眠りから覚め始めたばかり。
 心のチューニングを俺の祈りのピッチにどうか合わせてみてくれないか。
 冷めた日常の中で、俺達はどれだけの感動に出会うことを自分に許し、与えてやることが出来るだろうか。
 俺は信じたい。
 俺は愛したい。
 俺は自由になりたいんだ。

 ほんの少しの世界の馬鹿げた茶番に心のピッチを狂わせてしまい、愛の存在を否定してしまうなんて、俺にはやはりそれは悲し過ぎる話さ。
 人々の暮らしに張り付いた時計の針が、俺達の目を盗んで、少しその仕事を放棄した瞬間の様な、いいも悪いも存在しない時空間に生まれる自由と安らぎが音楽の生きる愛の世界の様に思った。
 街に流れる最新のデザインで身を固めたピカピカのJポップが抱えた憂鬱な波動に、人々の暮らしは引き寄せられ、エネルギーは増幅し、運命は常に入れ替わっていった。

 自分の心を信じ抜き、世界を肯定する強烈なビートが必要さ。
 乗り越え難き大きなトラウマさえも慈しむ、慈愛に満ちた人生の歌に、誰もが心を打ち明け、真実の前に再び人生の意味を思い出せますように。
 そんな祈りの念が、俺の人生を次のシーンへと繋ぎ止め、物語が必然性の中で様々なうつろいを見せ、進化を遂げてゆく。


 閑散としてしらけた午後の街並み。
 お気に入りのカフェで昼食を摂り、地方都市の横顔を心のキャンバスにスケッチしながら、俺はふらりと通りを行き街に佇んだ。

 小さな街の心臓部は経済破綻の色濃く、すっかり衰弱しているように見えた。
 それが末端へと進行し、人の暮らしは傾き、そこに生まれた空虚さを満たす豊かさを見い出す心構えを、俺は一人待ち侘びていた。

 事実と真実とが交錯する街角では誰もが孤独を抱え、寂しさをかばい合う暮らしの行方に、俺は耳を澄ませた。

 All Light
 路上で小さくタップを踏んで、駅を走り去る電車を見つめれば、俺のひと時の現実に浮遊する人の心の悲鳴を垣間見感じた午後の時間が、再び日常のリズムに引き戻され、俺は街を背に創作の友と手を繋ぎ、足早に帰宅の途についた。