イントロまでの距離

DREAM COMES TRUE

ふと、空に飛行船を見つけた。 そういえば、子供の頃、叔父に連れられた姉と僕は、飛行船を見せてもらった。 自由、平和、冒険に勇気。 少年が幼心に求めるそれらを、飛行船は僕の心に強く印象付けて、記憶の奥深くへと焼き付いた。 いつから僕らは、夢見る…

THIRTY SEVEN

二〇一一年が明けた。 僕は、元旦で三十七歳になり、人生について考え深いものがたくさんあるよ。 そして、この命で果たすべき使命について、初心に立ち戻りたいと思った。 僕はこの頃、ふと死について考えていることが度々あった。 年始から重いテーマに触…

良いお年を

大晦日の午後の街は、静かな暖色の佇まいを見せていた。 不景気に泣く暮らしも、そろそろこれからが本番で大変になるのだろう。 俺は、そんな風に思いながら、閑散とした街を見つめていた。 下流社会は、洒落にもならぬ貧しさに傾き続ける。 経済大国は、熱…

二〇一〇

二〇一〇年が消えゆく。 ざわめきに呑み込まれたため息に、一瞬自分の魂の叫びを聞く。 ここからどれだけ、僕は高く昇っていけるだろうか。 年の瀬の忙しなさを感じながら過ごした十二月。 僕は、いつもの様にメロディーを生み続けていた。 ノートに書き出し…

白昼の十字架

白昼の十字架 この街に、どうか本物の希望が生まれますように 二〇一〇年 クリスマスへの祈り 街通りを行く時、穏やかさを湛えた筈の日常とは裏腹に、僕の心は過酷さを背負っていた。 僕は、何かに裁かれてゆく様だ。 理想を口にすれば、偽善だと叩かれ、誰…

静寂の街明かり

夜に吸い込まれてゆく、無表情な街並み。 それは、まるで停止した思考を示すかの様だ。 愛と夢と音楽とを心のポケットに探りながら、錆ついた世界を通り過ぎてゆく。 愛か金かのシーソーゲーム。 静まり返った街通りには、その闘いの傷跡が寂しく色付いてい…

 二十四時間

一日二十四時間。 地球は益々速く回るみたいだ。 情報は溢れ、インターネットでは誰もが自由な思いを語り、世界はグローバリズムに踊り続ける。 僕は、この日本社会に生まれ育つ男。 生存競争に揉まれ、それでも心の中の大切なものを信じ、生きている。 誰が…

微笑みの訳

人の暮らしを支え、守り、街通りに色づく微笑み。 それはとっても素敵で、また時に切なく揺れる。 僕らが抱えた暮らしは、これから何処へ向かうべきなのだろう。 人は笑顔の作り方を覚え、積み木の様に心を重ねながら、大切にしたい気持ちや大切にしたい人の…

醒めたざわめきの向こう側に

二〇一〇年 僕の目に映る現実が、何だか泡の様に、慌ただしく幻の彼方へと醒めて消えゆく金曜日の午後七時。 年の瀬押し迫る一つの緊張感の波の中で、僕は一人、小さな部屋に置いた世界を垣間見ることの出来る箱の映像を見つめ続けていた。 抗おうと従おうと…

路上のQUESTION

相容れない日常のざわめきに押され、僕はこの身にバリアを張り、世界から離脱していく。 きめ細やかなバランスを保つ一つの言葉にも、僕は無防備に微笑むことが出来ず、人の善意を善意と素直に呼び、受け取ることをためらってしまう。 これは愛なのか 愛と呼…

愛愁の風

十二月の雨曇りの空を見上げる。 何だか今にも崩れ落ちてきそうで、泣いているみたいだ。 北風に吹かれ、葉を落とし、何だか寂しそうに佇む街路樹は、人生の晩年の人の姿に似て、僕のまだ知らない、覚えてきたもの全てを内に秘めている様で、そのおもむきが…

歩道橋の上の空

秋の柔らかな陽射し降り注ぐ、月曜日の午後。 経済破綻に傾いてゆく暮らしは、僕が持った様々な価値観に付随して、人生に背負った悲しみのその一つ一つを、無意識から意識の中へと追い込んでゆくかの様だ。 ほがらかな表情を見ぜる季節のうつろいとは裏腹に…

条件反射

三次元世界の中で、常に自分を取り囲む情報の波に条件反射し続ける思考。 僕が僕ではなく、他者から与えられた価値観により条件付けされた思考形態の中で、休むことなく日々様々な回答を出し続けている。 消し去ることの出来ぬ過去の痛みを手放すまで、人間…

音楽という名の神

無限に溢れ出す天使のメロディーを浴びて、魂の奥底の光輝くその場所へと進行した意識のその力を、取りとめもなく文字に置き換えてゆく日曜の午後。 真新しく生まれたかじりかけのメロディーは、実に神の祝福に満ちていて、いつも僕を生への実感に導き、心の…

太陽傾くゴーストタウン

発達した文明が築き上げようとしていた理想社会のドラマがそこには無数に存在していた。 果されるべき約束を夢見た人々は、出会いを求め心触れ合う優しさの温もりを誰もが信じたいと暮らしを愛おしんでいた。 その行為は、一種の現実社会からの逃避の様でも…

ALL LIGHT

正午前に眠りから覚めた俺は、ようやく秋らしさを帯び、大気の熱が沈静化してゆく季節の訪れに心和ませ、みずみずしい感性に磨きをかけるように部屋の窓の外に広がる世界に五感を注ぎ、心のテンションの高まりに自分の握りしめた希望の表情の健全さを確かめ…

静寂の夜明け

「そんなに熱くなって歌ってもな。歌でも何でも冷めてるくらいがちょうどいいよ」 小さなライブハウスの片隅の席に座っていた俺に、笑いながら酒をあおった顔馴染みの中年男がそっとそう話し掛けてきた。 あんたの泣きたい気持ちも分かるけどよ、俺はそんな…

痩せたステージの小さな微笑み

暖色に染まる賑やかな人々の話声とグラスの音や物音の飽和した田舎町の小さなライブハウス。 人々の心のモラルの崩壊した時代に無名ミュージシャンである俺の、名もない暮らしの物語が、その日転がっていた。 ステージの椅子に腰かけ歌う俺は、それでも歌う…

イントロまでの距離

8月中旬、過ぎゆく猛暑の日々。 気候に気分を乗っ取られる様な極端な夏から僕は逃げ出す事も出来ず、日中は暑さと背中合わせに時の経過を見つめ続けている様だった。 地球の異常気象も2012年に起こるとされている次元移動に伴う一連の動きであるという…

祝福の鐘

清らかなる魂を一つ持ち、この荒んだ世界を静かに見渡してみれば、本当に信じるに値するものなど初めから大して存在してはいなかったのだと深く再認識させられていった。 心の内側に無限のパワーを宿し眠っていた聖域に立ち帰った僕は、目に映る物事全ての本…

幻影への脅え

降りしきる雨の中、当てもなく人生を彷徨い歩く日々がある。 時には思いやりの意味を肌で感じながら、それでも次の瞬間にはさっきまで信じていた筈のその思いを心で裏切る様に背を向け歩いてしまう日々もあるかもしれない。 ありふれた日常の中で、きっと人…