微笑みの訳

 人の暮らしを支え、守り、街通りに色づく微笑み。
 それはとっても素敵で、また時に切なく揺れる。
 僕らが抱えた暮らしは、これから何処へ向かうべきなのだろう。


 人は笑顔の作り方を覚え、積み木の様に心を重ねながら、大切にしたい気持ちや大切にしたい人の為に生きる。
 ささやかな暮らしに生まれた微笑みは、幸せを共にした人の心を照らす明かりの様だ。

 僕はいまだに社会の中で時に戸惑い、時に深く失意の念を覚えながら、だけど今もまだ闘い続けている。
 そして、その闘いの訳をここに告白し、もう一度あすへの誓いを立てようとしている。

 微笑み。
 単純にただ微笑みと言葉を一つ目の前に置いてみても、そこには様々なイメージやメッセージや意味が湧き上がり、自分の心の中に感じ取ることが出来る。
 世界は、一つの欲望が生まれるたびに様々な葛藤や駆け引きを生じさせ、形を変え続け、その営みは続いていく。
 欲望は、幸福へと向かう心のエネルギーに違いないだろう。
 そして、人の描く幸福がより愛という性質に近づくことで、真実は救済され、偽りが壊されていく様な気がする。

 人の抱えた暮らしには、簡単に語れない、本当に多くのしがらみが存在していて、純粋に生まれる微笑みを見ることが難しく感じられる時が僕にはある。
 自分が知らないうちに、誰かに対して何かを期待した微笑みを、心に構えることはなるべくならば避けたいなと思う。
 そして、社会の中で、僕にもそんな性質の微笑みが向けられることは、なるべくならば少なければいいなと願う。

 純粋に真心から生まれた微笑みが、街通りにたくさん色づく世界の調和を思い、僕は一つ一つの歌を生み、奏でてきた。
 街はとても無表情になっているし、そして何よりもとても攻撃的だ。
 無表情という、微笑みとは対極に位置するこの記号は、つまり真心への不信感や苛立ち、そして自己防衛を示すもののように思う。
 無関心、無感動は傷つくことを恐れて、それ以上物事に深く踏み込まない心構えの象徴の様に思える。
 そして、僕の日々の闘いは、自分自身が世界と向き合ったり、また自分自身と向き合う時、そうならないで、常に挑戦と情熱の大切さを忘れずに、心の中にいつまでも持ち続けていようとすることだった。

 自分をよく見せる為の微笑み。
 他人から愛される為の微笑み。
 人を陥れる為の微笑み。
 微笑みが様々な人の心の訳に染まり、誘惑しながら咲いている。
 欲望を叶える為の微笑みの裏の、その心に戸惑いを覚える日常を、僕はひたすらに真実を求め生きている。
 それが、僕の生きるという闘いなんだ。


 街に行き交う人々は、それぞれに違った人生の幸福へと歩き続けている。
 様々な主義主張が存在し、I Love Youと叫ぶ僕の生き様は、見当違いとなり、笑いを呼ぶこともきっと多いだろう。
 そして、心擦れ違っていく人の生き様に、僕は一人ため息を洩らし、真の自由と平和の意味について考え続けてきた。
 暮らしは、その答えを待つ間もなく、何処かへ流れ続けていく様だ。

 僕は、上手く纏まらない、感情を思考と繋ぎ止める為の創作の日々に明け暮れる。
 街通りに生まれる無数の微笑みの訳に、真実を探して。