傷ついた鎧

 夕暮れの街は、とても穏やかで、キラキラと光を散りばめた宝石箱のようだ。
 団地の坂道を下りながら走る車から望んだ風景に、一日の終わりの美しさが滲んだ。



 僕は、ふらりと立ち寄ったきららカフェでの即興ライブの余韻を引きずったまま、家路を辿った。
 季節は、もうすっかり秋。
 九月の街並みが、とても爽やかに輝く。
 フレンチトーストとしてのライブも、何だかいい感じで快調だった。
 音楽に費やす情熱の対価として、僕の心は深く安らいでいくように思えた。
 カフェでは、いつも色々な人との出会いがあり、相変わらず僕は歌い続けていた。
 歌にこの思いの全てを込めて。



 TODAY


 どでかい腐った資本主義社会の中で、とても無力でちっぽけに思えるような自分に出来ること。
 それが、きっと希望の未来への扉だ。


 皆で空気を読み合ってるような街に埋もれてしまわぬように。
 そして、それは対立を煽り、人と人とを分け隔てて分裂していくこととは違う。
 主張を心に持ってはいるが、他人に押し付けるものであってはならない筈。
 そうなってしまった時には、如何なる優れた思想も、もはや利己的な正義と化してしまい、争いの火種を生んでしまうものなのだろう。



 自分自身の在り方で応えること。
 それが僕にとっての、互いの自由を認め合い、自分にとっての真実を生きる唯一の道だ。
 傍観という名の傷ついた鎧を脱ぎ捨てて、在るがままの心で立ち向かう、真実への誓い。



 秋の気配と共に暮れてゆく、静かな街並み。
 僕は、遠くため息を吐き出すように、空の彼方に視線を向け、黄昏が切なく唸りを挙げているようだった。