便り

 夕日の滲むアスファルトジャングル。
 それはまるで、昔聞いた終戦の頃のシーンに重なって見えた。



 寸断されたレールはねじ曲がり、ジャングルランドの掟が毎日に鋭い牙を剥き出しにしている。
 秩序と平和を守る理念の根幹を喪失した世界。
 社会の闇に眠り続けてきた詐欺が素顔を現し、真実の光に照らされている。
 福島第一原発メルトダウンは、まるで経済戦争敗戦の知らせの便りのようだった。
 あの日から、街は随分姿を変えてきたと思う。


 家族の心さえも何だか繋ぎ止めるものもなくて、集団が一度個へとバラバラに散らばり、暗黒の宇宙にキラメク星屑の瞬きを見つめる寂しさや切なさを感じているかのようだ。
 社会を縛るものが消滅し、体制の支配構造が麻痺した暮らし。
 それは大いに歓迎すべき新時代の幕開けでもあったに違いない。
 そして、それは同時に僕ら自身の人生に様々な挑戦状を突きつけてきたのだろう。
 僕はパラダイムシフトと呼ばれる宇宙的なスケールの儀式に遭遇していた。


 闇は生命を生み出す母の子宮に似ている。
 痛みは、僕に新たな思考の転換を求めた。
 僕は、歌うことで自己を完結させ、世界の平和を願った。



 あのゴーストタウンを駆け抜けてゆく一吹きの風。
 奇形の花が咲き、家畜は彷徨う。
 そして滅びゆくかのような文明の足音を聞きながら、ジャングルランドの過酷な生存競争は本性を剥き出しにしてゆく。
 いつも不満とストレスを抱えている人々。
 些細な事に心を尖らせ、いがみ合ってばかりだ。


 もう、この街に何か確かに思えるライフモデルなどはなく、レールを降りて、人は己の心に人生を問うより他に幸せを掴む術はない。
 人々は益々心を閉ざし、感じないように、考えないようにしている。
 だけど、それが逆に苦しみを増幅させる結果へと繋がる道だとは気付かない。
 負の感情への対処の仕方を教えられずに育ったから、考えずに明るく過ごそうと気持ちを誤魔化すけれど、それももうどうにも上手く立ち行かなくなった現実がある。
 それが他者を批判する心や無関心さの正体だろう。


 僕は、壊れたレールを降りて、個の自立を獲得していくチャンスとして、この時代を捉えている。
 言葉に誤解を受けてしまうかもしれないが、時代はある意味良くなっていってる最中の気がする。
 確かに重過ぎるような現実がある。
 だから、余計に本当のことを歌わなくちゃならないんだ。


 ただ明るく前を向いてというのは、結果的には苦しくなる道だ。
 社会のレールが壊れてしまったから、心の中に秩序を描く方法も消えているし、それは感情という臭いものに蓋をして、見ない振りをしているだけだ。
 そこから始められる人の暮らしの幸せは、もうない。
 だから、僕は本当のことを歌わなくちゃならないという使命感すら覚えている。
 歌は、誰かに気に入られる為に書くものではない。
 価値観を変える為に書くのが、本当の歌だ。



 僕は頬に当たる一吹きの寂しい風を感じるように、壊れたレールのイントロをギターで奏でた。





   壊れたレール
Words & Music by Yoshinori Sugawara


大日本帝国 玉砕の夕日
丸の内の 空 重なり見える
平成 経済戦争 終焉
Meltdownの運命 どんなあす待つ


幸せは壊れたレールの彼方
汗流し築き上げた Wow 文明 平和が崩れる


己に何を人は問うのだろう
レールを降りてどこへ向かうのだろう
平成 ライフモデルが色褪せる
街は 幻 ユートピア 夢を見ている


幸せは壊れたレールの彼方
SafetyなきJungle Wow 文明 パラダイムシフト



俺は真実を掴みたい


幸せは壊れたレールの彼方
もっと自由に愛し合う Wow 文明 誕生させよう
Wow 世界を 一つの国家に