二〇一〇

 二〇一〇年が消えゆく。
 ざわめきに呑み込まれたため息に、一瞬自分の魂の叫びを聞く。
 ここからどれだけ、僕は高く昇っていけるだろうか。


 年の瀬の忙しなさを感じながら過ごした十二月。
 僕は、いつもの様にメロディーを生み続けていた。
 ノートに書き出した、十二月に入ってから作曲した曲の仮タイトルを数え上げてみれば、ちょうど百曲目に当たり、僕の音楽という名の神を描き、創造する闘いに終わりはなかった。
 僕らは皆、誕生した瞬間に余命宣告を受ける定めに生きる戦士の様だと頷きながら、僕は限りある生命の営みのその全てを、不滅の名曲へと昇華させたいと願い生きた。

 二〇〇九年に自主レーベル“Harmonic Town Records”を設立したものの、社会的還元へと繋がった仕事を残せず、僕は二〇一〇年を厳しい精神状態で生き延びようとしていた。
 そんな僕のたった一つの救いは、制作をスタートさせてから約四年の歳月が流れた、アルバム「名もない日常のSTORY」の基本がようやく完成したこと、ただそれだけだった。
 自己の内部のエネルギーを、作品という形で完結させてこそ得ることの出来る、社会性を強く求めた一年だった。

 僕は、躓いてばかりの人生だったけれど、二〇一一年以降の自分の人生が、社会の利益にも繋がるものになって欲しいと切望せずにはいられなかった。


 歌が世界を変えるなんて言ったら、君は笑うだろうか。
 だけど、歌以外に世界に神の意思を強くメッセージし、闇を彷徨う魂にさえも光をもたらすことの出来る、愛の器としての芸術を僕は知らない。