2014-01-01から1年間の記事一覧

波紋

店に着いたのは、ラジオ収録を兼ねたライブ企画が始まって暫くした頃だった。 慣れ親しんだライブハウス“HIDEAWAY”の扉を開けると、アコースティックユニットの演奏が洪水のように溢れた。 六月最後の日曜日。 僕がここに来たのは、マスターであるトクさんか…

民衆のCHRISTMAS

国会議事堂を、手を繋ぎ包囲する民衆。 いつもならばクリスマスがもうすぐやって来ようかという楽しい筈の季節。 年末の忙しなさやドキドキ、ワクワク感が入り混じり、全国の各都市はイルミネーションの彩りで賑わう。 デパートの宝石店前では、ジュエリーを…

運命への序章

人の欲望を司るものの真実を、僕は深く知りたい。 運命への序章 むさ苦しい真夏の大学の軽音楽部の部室は、ノイズ混じりのエレキギターの音色に塗り潰され、とても夢なんかには辿り着けないようなブルーな気分だった。 僕は、自分らしさを信じ生きようとして…

TODAY

さらば資本主義より TODAY 1992年 東京 埃っぽい街風が、額に流れる汗に溶け、素肌をべたつかせる。 鉄骨を地面に打ち込む工事現場の地響きに、僕はこの街の願う発展の行く末を思い、伏せ目がちに小さなため息を洩らした。 アスファルトジャングルの掟に誰も…

SHOUT

木曜日のきららカフェに顔を出すのは、どちらかというと少し珍しい。 僕は奥の部屋で、マスターとのユニットで歌う。 五月最後の木曜日。 部屋は蒸し暑く、段々真夏が近付いて来ることを肌身で感じている。 歌い出して間もなく、額から汗が吹き出している。 …

序章

初夏というには、まだ気が早いようだけど、それでも五月の快晴の空は高くなりつつあり、遠く入道雲のようなたくましい雲が出始めていた。 国道を走る車の窓から、マイホームタウンを眺め、東へ向かった。 雑用を済ませ、今度はきららカフェへと向かう。 この…

フレンチトースト

きららカフェのマスターと新ユニット“フレンチトースト”を結成!

SPECIAL DAYS

カフェの扉から店内へ入り、マスター御夫妻に挨拶をする。 一週間ぶりに顔を出す、きららカフェ。 水曜日の午後。 カウンターに並んだ、オーガニックで出来た焼き立てパンに微笑む。 何気ない毎日は、本当に恵まれたものの多さに驚く程だけれど、まだ何かが…

GATE

店の前に飾られたガーデニングの花束は、四月の静かな午後を彩り、とても綺麗だ。 何気ない幸せって、こんな感じかな。 僕は、心満ち足りてゆくような気持ちになりながら、二週間程前ライブをさせてもらったきららカフェへとやって来ていた。 二〇一四年 春 …

社説

社説 Words & Music by Yoshinori Sugawara 社説には孤独死のニュース 未来を不安が覆い 新卒の企業戦士達 ブランド着飾るライバル Wow ちっぽけな部屋の窓辺 安らかな夢を描く 朝の陽射しが優しく 暮らしを包む ささやかに ほら 幸せを照らし Wow Oh Oh こ…

永遠の九条

永遠の九条 Words & Music by Yoshinori Sugawara 零戦 焼けついたエンジン唸り 空中戦 弾丸に白煙 視界塞がれ 旋回 敵艦の背後につける 彼は十六 操縦かん握ってる 亡国のFlight 兵士の 英霊讃えるのなら 永遠の九条 謳おう Japan Wow 少年兵達 最敬礼 空…

ささやかなデビュー戦

ライブ前。 楽屋代わりに座っていたカフェのテーブル。 四月の夕暮れに、僕は演奏前の緊張感を抱え、いつものように相変わらず落ち着かない気持ちでいた。 だけど、その感覚がいいんだと、もう一人の僕が言う。 振り返った窓ガラスの外は、とても澄んで綺麗…

未来へのFLIGHT

僕は、ふと道の駅でのドラマロケに遭遇した。 晴天に恵まれた、三月最後の一日。 現場の空気を体感しながら、ジクゾーパズルの一齣を入れ替えるように続く、カット割りされたドラマのシーンの撮り直しを見学していた。 誰もが自分の人生の中では主人公を演じ…

壊れたレールの彼方

昨年暮れ頃から僕が始めていた、サロン感覚のアコースティックライブ。 嘘の生まれようのない距離感で、限りなく純粋に音楽の持つバイブレーションが伝えられるような空間。 今年に入ってからも、そのスタイルで身近な人に生の音楽を届けていた。 現実と虚構…

HAPPY BIRTHDAY

北風に抱かれた季節。 ライブハウス「HIDEAWAY」の壁に掛かった時計の針が、テンポ良く進み、マスターであるトクさんへの僕の個人的な還暦祝いの夜が、もうすっかり夜明けの訪れを待つばかりの時刻に辿り着いていた。 数日前である誕生日当日。 僕はその日の…

オーロラ

オーロラ Words&Music by Yoshinori Sugawara エストニア滞在記 読んでいたブログ記事 拝啓 先生 元気でいますか 梅雨空 見上げた 世界旅して 心のまま 夢を追って どんな自由を 思い描いて 暮らしていますか 白夜の空 オーロラを待つ バルト海 ふところ抱…

ラビリンス

工事現場の見張り役の中年男性に、上司らしき男が、荒々しい口調で一言尋ねた。 「工事は何時までだ!」 見張り役の男は、その上司風の男の横柄な物言いの言葉が耳には届いていない様子で、小走りに工事車両に近付き、通行しようとする一台のバンと通行人で…